ワンちゃんと私たち人間にはどのような違いがあるのでしょうか?
何回かに分けて「体の構造」や「習性」、「歴史」などに着目して解説していきます。
今回のテーマは「食べ物、消化器官」です。
食性の違い
人間もワンちゃんもお肉も野菜も食べる雑食ですが、ワンちゃんは野生であった頃の名残で「肉食系の雑食」と言われる分類になります。
同じ雑食でもワンちゃんが「肉食系」なのは何故でしょうか?体の構造を見てみましょう。
消化器官の違い
消化管の重さの割合
人間は体重に占める消化管の重さの割合が約11%と言われています。ワンちゃんの場合、体重に占める消化管の重さの割合はバーニーズ・マウンテン・ドッグなどの超大型犬で約2.7%、小型犬で約7%です。
消化管の比率が大きければ大きいほど、消化に時間をかけて食べ物をじっくり消化することができます。
この比率から見ると人間と比べてワンちゃんは消化にあまり時間をかけられないことがわかります。実際、犬の消化器官は哺乳類の中で一番短いと言われており、全体の消化に要する時間はおおよそ8~9時間程度です。
口
人間の歯の数は32本。それに対してワンちゃんには42本の歯があります。
ワンちゃんの歯は門歯、犬歯、奥歯で構成されています。
門歯は毛づくろいに使用され、犬歯は獲物の皮膚を突き刺し、奥歯は獲物の肉を切り裂く機能があります。
人間の歯は臼のようにすり潰し易い形状をした歯が多く、野菜等の繊維質の食べ物の消化がしやすくなっていますが、ワンちゃんは犬歯、奥歯共に尖った歯で、お肉を噛み切って飲み込むのに適しています。咀嚼回数も人間と比べるとワンちゃんは非常に少なくなっています。
また、人間の唾液には消化酵素が含まれており第一段階の消化を口内で行いますが、ワンちゃんにはこの消化酵素は含まれていません。
ワンちゃんの口は単純に「食べ物を飲み込めるサイズにする」だけの場所と言えます。
ちなみに、ワンちゃんの唇の裏にはクシのようなヒダが有り、口を開け閉めするたびに歯にあたって歯をキレイにします。
胃
先述したように、ワンちゃんは人間と違って口で消化プロセスが無いため、ワンちゃんにとって胃は無くてはならない大事な消化器官です。
人間と変わらずワンちゃんも胃に到達した食べ物は胃酸で分解されていきます。ワンちゃんはこの段階で正しく分解されなかった食べ物を吐き出し、再度飲み込むという本能を持っています。
人間と比較するとワンちゃんはタンパク質を消化酵素で分解する能力に長けています。逆に植物に含まれる炭水化物を分解する能力は低いと言われています。
腸
胃で分解され液体となった食物の栄養素を吸収していきます。
腸の長さは人間が体の長さの約5倍なのに対して、ワンちゃんは約4.5倍と人間に比べて短いことがわかります。ちなみに草食動物のウサギは約10倍です。
この腸の長さの違いは栄養の吸収時間に関係してきます。栄養価が高く、消化吸収がしやすい肉をメインに食べるワンちゃんは吸収時間が短く、速くても大丈夫なため、腸が短くなっています。
ワンちゃんは腸が短いため、人間が食べるような繊維質が豊富なモノを食べると十分に消化吸収されないまま、排泄されるケースがあります。
必要な栄養の違い
主食
人間は炭水化物を主食としていますが、犬はタンパク質が主食です。
先述の通り、ワンちゃんは炭水化物の分解が不得意なため、手づくりのご飯をワンちゃんに与える場合は炭水化物の割合は低くしましょう。
ワンちゃんにはビタミンCは不要
人間はビタミンCを摂取しないといけませんがワンちゃんはビタミンCを体内で生成できるため食物からビタミンCを摂取する必要がありません。
人間よりも必要なアミノ酸が多い
人間の必須アミノ酸は10種類ですが、犬の場合は12種類です。そのため、タンパク源の種類が豊富なほうがワンちゃんの体には良いと言えます。
塩分に注意
ワンちゃんが生存のために必要な塩分量は1日1kgあたり10mgと言われています。これは人間と同じ比率です。
しかし、ワンちゃんと人間では体重に大きな差があります。人間の場合、体重が50kgであれば1日500mgですが、5kg程度の小型犬であれば1日50mgとなります。
平成24年度の日本人の平均食塩摂取量は20歳以上の成人で1日あたり10.4gでした。ワンちゃんの生存に必要な塩分量と比べると約200倍多く摂っていることになります。
「人間の食事をワンちゃんに与えてはいけない」というのは、「食べてはいけない食べ物を食べさせない」ということ以外にも「塩分の過剰摂取を防ぐ」という効果もあります。
もしも食べさせたら一口でワンちゃんの1日の塩分を突破する可能性があるので、人間の食べ物をワンちゃんに与えないようにしましょう。
塩分の多い食事を長期間にわたりワンちゃんに与えていると腎不全や動脈硬化などの疾患を起こす危険性があります。
とは言え、塩分は「少なければ少ないほど良い」というワケではないようです。塩分が足りなくなると「よそのワンちゃんのオシッコを舐める」、「土やコンクリートや壁などをよく舐める」といった行動を取るようになります。
(参考)「あい動物病院」食餌の話 人間の食べ物を犬に与える話 塩編2
何事も「適量」が大事ですね。
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